緑内障

こんにちは。

今日は犬の緑内障についてお話します。

緑内障とは眼圧の上昇によって視神経に障害を与える病気のことです。

角膜と水晶体の間には「眼房水」と呼ばれる液体が存在し、その圧のことを眼圧といいます。

※厳密にいうと、眼圧の上昇がなくとも視神経に障害が引き起こされる病気のことを緑内障といいます。ヒトでは多くの報告があるようですが、犬ではこの病気の背景に眼圧の上昇が多く認められることから、「緑内障=眼圧の上昇」という認識のことが多いです。

 

緑内障による視神経の障害は不可逆的なもので、重度な障害によって失明した場合、視覚が回復することはありません。

 

緑内障は原因によって以下の3つの分類があり、それぞれ治療方針や予後が変わってきます。

①先天性緑内障:先天的な形態異常によって起こる緑内障

②原発性緑内障:眼圧を上昇させるような眼の疾患がなく、眼房水の流れが悪いことによって起こる緑内障

③続発性緑内障:眼圧を上昇させるような眼の疾患に続発して起こる緑内障

①②の場合は、眼房水の流れを良くするような治療を行いますが、③の場合はそれと共にもともとの眼の疾患に対する治療も必要になります。

 

治療をはじめるにあたって大事なのは、視覚の有無です。

視覚が残っているかどうかで治療の目的が変わってきます。

視覚が残っている場合、治療の目的は視覚の維持です。とくにかく眼圧を下げる治療を行います。

その子の状況によって、内科療法(点眼薬、注射、内服など)や外科療法、もしくはその両者で治療をすすめていきます。

 

視覚がない場合、つまり失明している場合は、今の痛みをとってあげることが最大の目的になります。

疼痛管理のための点眼を継続していくか、外科療法をするか、飼い主様とご相談して決めていきます。

 

 

 

本症例は、4日前に左目にものが当たってしまい、それから腫れて痛そうとのことでご来院されました。食欲も低下していました。

眼の検査をすると、眼圧は66まで上がっており(正常値:10~20)、残念ながら視覚は失っていました。

飼い主様と相談の上、まずは眼圧を下げる点眼薬で、眼圧が下がるか、腫れや痛みがとれるか反応をみることになりました。

それで反応がなければ、眼球摘出もしくは義眼などの手術を行うことも提案しました。

点眼開始3日後には眼圧の低下が認められ、2か月後にはほぼ正常値にもどりました。

相変わらず眼の腫れ、充血は軽度に認められますが、本人は痛みから解放され、元気食欲は安定しているとのことでした。

今回は本人への負担や術後の外貌のこともあり、手術は希望されず、今も点眼で眼圧をモニターしながら疼痛をコントロールしています。

 

緑内障は、かなり激しい痛みを伴います。

放っておくと失明の可能性もある疾患ですので、早期発見・早期治療が大切です。

愛犬の眼に違和感を感じたら、迷わず受診をおすすめします。

 

オハナペットクリニック 二階