膝蓋骨脱臼
こんにちは。
新生活も少し落ち着き、お家に新しいご家族を迎え入れる方も多いのではないでしょうか🐶
今回は子犬ちゃんでよくみられる「膝蓋骨脱臼」という疾患に関してお話しします。
📚病態📚
膝蓋骨脱臼は日常診療でよく見られる疾患の一つで、膝蓋靱帯という靱帯により繋がっている膝蓋骨(膝小僧の骨)が大腿骨(太ももの骨)に存在する溝(滑車溝)から脱臼してしまうことで膝に痛みが加わってしまう疾患となります。膝蓋骨の英名に伴い、「パテラ」として呼ばれています。主にケンケンするような歩行異常や後ろ足をあげっぱなしにしてしまう仕草を取る子が多いです。中には脱臼が生じていても無症状の子もいます。
膝が体に対して内側に外れる内方脱臼が全体の9割近くを占め、その95%が小型犬が関与していると言われています。代表的な犬種では、トイプードル、ポメラニアン、チワワなどのトイ種がほとんどで、性別での発生率の差はないです。片側のみ症状が出る子もいますが、両側症状が出てしまう子も多い疾患です。大型犬でも稀に体に対して外側に外れる外方脱臼が起こる子がいます。
膝蓋骨脱臼は大腿骨周囲の骨格異常に伴う発生がほとんどであるため、多くが1歳未満の成長期で診断されます。大人になるまで無治療で過ごしていると関節軟骨の炎症が生じやすくなり、関節炎の罹患につながる可能性があります。
🔍診断🔍
主に触診による診断と歩き方の異常がないか歩行検査を行います。また大腿骨の変形の評価法としてx線検査を組み合わせることがあります。
💊治療💊
内科療法と外科療法に分類されます。内科治療としては膝に負担がかからないように体重管理も大事です。他にも関節保護作用のあるサプリメントの日常内服や痛みが強い場合に消炎鎮痛剤による対症療法を行います。一方で根本的な治療をする上では外科手術による治療が必要です。膝の手術は膝周りの筋肉の調整や大腿骨の溝の形成術などいくつかの手技を合わせて治療します。
膝蓋骨脱臼は脱臼の重症度からgrade1から4に分類されます。かつてはgradeの進行に合わせて外科手術が必須となっていく考え方がありましたが、現在ではグレード分類と臨床徴候は必ずしも一致すると限らないため、現在は痛みの程度に合わせて治療を検討する跛行分類という検討方法により治療介入や手術の適用不適を判断していく考え方が浸透してきています。一方で脱臼の程度がgrade1だとしても強い痛みなどの臨床症状が見られる場合は外科療法が適用となります。
🦴膝蓋骨脱臼のグレード分類🦴
Grade I 徒手にて脱臼させることが可能で、指を離すと自然と元の正常な位置に戻る。
Grade II 徒手にて脱臼させることが可能だが、容易に脱臼、整復できる。
Grade III 膝蓋骨は常に脱臼しているが、徒手にて整復できる。
Grade Ⅳ 膝蓋骨は常に脱臼しており、徒手における整復はできない。
お家に迎え入れて間も無いパピーちゃんだからこそ健康診断の際にお膝のチェックをしっかりさせていただくことで症状の進行を大きく予防できる可能性が広がりますので、ワクチン接種や健康診断など予防検診ご活用いただければと思います。
市川