認知症(認知機能不全症候群)
こんにちは
夏もそろそろ終わりに近づいてますね
地震や台風など気になることも多いですが、皆様お気をつけてお過ごしください。
今回は犬、猫の認知症(認知機能不全症候群)についてお話します。
⚫︎認知症とは
“さまざまな原因で記憶や思考や判断などの認知機能が低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすことをいいます。“
また認知機能不全とは、
“加齢にともなう脳の退行性変化による進行性の認知力低下を原因とした行動変化の総称である。“
となっております。
「認知症」は一般的にヒトでよく使われ、
犬、猫だと「認知機能不全症候群」として使われることが多いですが、
大きな意味で同じ事を指しているので使い分けを気にする必要はあまりないとおもいます。
認知機能不全の症候としてDISHA(A)の5つのカテゴリー(不安を入れて6つの場合も)があります。
Disorientation : 見当識障害 迷ったり・見えてない様子
social-environmental Interaction change:社会的な関わりの変化
Sleep-wake cycle change:睡眠サイクルの変化
House soiling:不適切な排泄
general Activity:活動量の変化
(Anxiety):不安行動
犬では12歳以上で発症率が増加し、12~14歳で15%前後、14~16歳で30%前後、16歳以上で60%以上が罹患しているともいわれてます。
猫では犬よりも報告が少ないですが、14歳以上での報告がいくつかあります。
⚫︎ 認知症をチェックするための行動変化 (DISHAAを具体的に並べてます。)
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・異常運動:行ったり来たり・回る行動・うろつき歩き
・壁や床をぼんやり見続ける。
・なじみのある人や動物に対する認識が変化する。
・物や家具の後ろで動けなくなる。
・壁や家具に向かって歩き続ける。
・命令に対する服従や反応が変化する。
・外に出ようとドアの蝶番側に行く。
・飲まないにもかかわらず水入れのところで立ち止まっている。
・不適切な排泄の頻度が増加する。
・落としたフードを探すのが難しい。
・散歩や外出先での興奮が変化する。
・夜間に頻繁にうろつき回る。
・撫でられたり触られたりするのを避ける。
・新しい行動を覚えるのに時間がかかる。
・遊び以外の活動に費やす行動が変化する。
・何もないまたは理由がわからない吠え。
・帰宅時の飼い主への熱狂的な出迎え。
・不活発な時間の割合が変化する。
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⚫︎診断
①上述のDISHAAの症候の確認
②感覚機能の低下や歩行・姿勢の異常
③他の身体疾患の除外
診断は①②③で総合的に判断することが多いです。
特に③は重要で、別の重篤な病気が隠れていたり、脳神経の別の病気の可能性もあるからです。
また猫では明らかなDISHAの症候を示す猫は稀で、DISHAの症候がみられる場合には高確率で他の身体疾患が存在していることが多いと考えられていて、猫の認知症単体での発症は犬に比べてかなり珍しいと考えられてます。
⚫︎治療
① 環境整備と介護
② 脳と身体の活性化
③ サプリメント
④ 食事療法
⑤ 薬物療法
上記をそれぞれの症状に合わせて、試していくことが多いです。
基本的には認知機能不全症候群は治るものではないので、緩和やQoL(生活の質)の改善を図る治療になります。
ヒトの医療の発展と共に、獣医療も日々発展してきています。
その恩恵を受け、ペットの寿命も延びていますが、長生きしてく中でまた新しい問題も増えていきます。
長生きしてくれたから起こる病気は必ずしも悲しいものばかりではないですが、
飼い主様ご家族、犬・猫本人たちがつらくなってしまうのは悲しいので
その場合はできる限りQoL(生活の質)が保てるようにお手伝いができればとおもいます。
お薬やサプリメントも以前よりも安全に使えるものも増えているので、困ってることがあったり
今日の記事を読んで気になることがありましたら、診察のときなどにぜひご相談ください。
オハナペットクリニック
獣医師 多田