糖尿病

こんにちは!

寒い時期はこたつの中で美味しいものを食べてゆっくりしたいですよね!

生活習慣も乱れやすいこの時期に気をつけたい『糖尿病』に関してお話しします!

📚病態📚
糖尿病とは
インスリンの欠乏や反応性低下などにより高血糖が生じ、様々な代謝異常が生じる疾患』と定義されています。
発生する原因により主に1型糖尿病と2型糖尿病に分類されますが、犬猫で起こりやすい発症原因が異なります。
 
1型糖尿病:犬で多く、インスリン不足や欠乏が原因とされます。
膵島の萎縮などの遺伝的・免疫学的要因が発症のきっかけとはされていますが、発症後にクッシング症候群、膵炎などを併発する子も多いです。
 
2型糖尿病:猫で多く、インスリン反応性の低下が原因とされます。
人の生活習慣病(肥満)や、妊娠に伴う黄体期糖尿病、腎臓病などによるインスリン抵抗性の増加がきっかけとなることが多いです。
 
📚臨床症状📚
初期には多飲多尿、多食、体重減少が出るとされ、進行とともに元気食欲の減退や、嘔吐下痢、脱水が生じます。
また重度では代謝異常により強烈な酸性成分であるケトン体が生成されることによりショック状態に陥る可能性もあるので注意が必要です。
犬においては合併症として先に述べたクッシング症候群などの他にも、長期の高血糖状態により白内障を併発すると知られていますが、猫では少ないとされています。
 
📚診断📚
主に血液検査(高血糖や脱水兆候の確認)、尿検査(尿糖やケトン尿の確認)で診断を行います。
先に述べたように合併症が多い疾患のため画像検査をスクリーニング的に行うことでそのほかの疾患がないかも確認します。
猫の場合は原疾患の治療でインスリン抵抗性が大きく改善することもあるため治療経過によっては離脱できる可能性があります。
 
📚治療📚
重症度に応じて治療が異なります。
 
⚪︎維持期(食事が自身で安定して取れている際の治療)
①食事管理
高タンパク、低〜中炭水化物、低〜中等度の脂肪、中〜高繊維食が望ましいとされています。
ただし、食べてくれない子もいますので基本的には継続的に食事が取れる嗜好性がいいものを前提に治療を行います。
厳密なカロリー計算と食事時間の管理が必要になるケースがほとんどです。
 
②注射管理
インスリン製剤を1日2回目安で皮下注射します。
自宅で注射管理する必要があるため実際に飼い主様に注射方法を指導させていただきます。
 
インスリン製剤は作用する時間に応じて❶速攻型インスリン❷中間型インスリン❸持続型インスリンに分類されますが、主に犬では生体内で生成されるインスリンと類似した作用時間を示す中間型インスリン(ノボリンN)を用いた治療から開始することが多いです。
猫ではインスリン量ではなく、インスリンの抵抗性が関与するため持続型インスリンを選択します。代表例ではプロジンクやレベミルなどを用いますが、極端にインスリン抵抗性の高い猫はランタスなどの力価の強い製剤を用いて治療を行います。
 
 
 
 
当院で扱いのあるインスリン一覧
赤:速攻型インスリン:Rインスリン
青:中間型インスリン:ヒューマリン(ノボリン)N
緑:持続型インスリン:上からプロジンク、レベミル、ランタス
オレンジ:超持続型インスリン:トレシーバ
 
 
⚪︎糖尿病性ケトアシドーシス(重度の脱水や体重減少、嘔吐下痢、食欲不振などを呈している場合)
⇨通常、生物は細胞内の糖をエネルギー源として利用する糖代謝を行いますが、インスリンの作用が不十分な場合、不足した糖の代わりに脂肪を燃焼させることでエネルギーを作ろうとする代謝に変化します。その際に産生される物質に強烈な酸性成分である『ケトン体』があり、これが蓄積されることにより細胞は強い障害を受けます。
血液中にケトン体が過剰に存在している場合、尿中に排泄がすすみ、この状態を『ケトーシス』といいます。
それに伴い血液中のpHが低下(酸性に変化)し、多臓器に障害が生じる状態を『ケトアシドーシス』といい、命に関わるため救急疾患として迅速に治療します。
 
 
①脱水補正のための点滴治療
経過に応じて点滴を行いますが入院治療での管理になるケースが多いです。
脱水状態が重度になると循環不全が生じるためショック状態になるリスクが発生します。
 
②注射管理
血糖値が安定し食事が取れるようになるまでの間は速攻型インスリン(Rインスリン)を用いて静脈注射にて治療を行います。
インスリンは血液中のカリウムやリンを用いて細胞内に糖を運搬するため、カリウムやリンを補正する治療も同時進行で行います。
重ねてインスリン製剤により低血糖になるリスクがあるため、通常5%ブドウ糖液などと一緒に点滴を流すことで予防します。
細胞内に糖質が十分に運搬されると糖を用いた正常な代謝に戻り、ケトン体の産生が止まります。
 
 
糖尿病は遺伝的な要因で発生することもありますが、肥満予防などの生活習慣対策で発生がコントロールできる疾患でもあります。
多飲多尿など気になる症状があれば遠慮なく当院にご相談ください。
 
獣医師 市川