マムシ中毒
こんにちは!獣医師の市川です!
徐々に夏を感じさせる暖かさが出てまいりましたが皆様いかがお過ごしでしょうか。
今月は稀ではあるものの身近に潜む『マムシ中毒🐍』に関してお話ししようと思います。アウトドアに行かれる方は特に必見です。
🐍病態🐍
マムシはクサリヘビ科の毒ヘビの一種で春から秋(4~10月頃)にかけて活動します。産卵期は8〜10月ごろで攻撃性が増すとされ、一層注意が必要です。夜行性のため昼間はあまり動き回らないとされていますが暖かくなってきたこの時期には活動時間が伸びる可能性があります。
犬が好奇心からマムシの匂いを嗅いだり、近づき過ぎてしまうことで咬まれることがあります。基本的にはおとなしい蛇のため見つけた場合は速やかに離れてください。
また生活環境として水辺や背丈の高い草むらなどの湿地や竹薮などに好んで住み着きます。
📚症状📚
マムシ毒は『溶血毒』と呼ばれ、主な作用としては①出血作用②蛋白(筋)分解作用③浮腫作用があります。
咬傷部と毒の注入量によって多少の経過が異なり、頭部の方が四肢よりも重症になりやすいです。
特に顔まわりを噛まれた際は重度の浮腫作用により呼吸困難や摂食困難、ショック症状が生じる可能性があり、口唇は粘膜障害により脱落することもあるため注意が必要です。
平均的な症状の悪化のピークは3日前後とされ、入院期間は1週間前後となることが多いです。
💉検査・治療💉
治療は持続点滴による毒素の中和と咬傷部の感染管理が中心となります。
筋肉の融解作用によって発生する代謝産物や細胞内物質が全身循環にのることによって腎障害や肝障害が生じることがあり、これが死亡例の大半だとされています。
またマムシの口腔内にはたくさんの病原菌が常在しているため、化膿部に対しては迅速な培養検査を実施し、適切な抗生剤を使用します。
血液検査によって貧血や筋障害、炎症の程度を確認します。
レントゲンや超音波検査により外傷の程度を確認します。
重度に赤血球や血小板の減少などが認められる場合は輸血にて対応します。
当院でも咬傷がきっかけで入院した子がおります。
咬傷後1時間後
咬傷後1日後
元々シュッとした小顔ちゃんですが蛇毒の影響で数時間のうちに激しい顔の腫脹が起こってしまいました。現在は入院を数日した上で無事退院し、元気に過ごしております。
入院中も顕著な筋融解と凝固障害により貧血が認められました。
早期の入院点滴治療が大切です。
インターネットでは犬は蛇に噛まれても大きな問題にならないという記事もありますが、急性に蛇毒による腎障害や肝障害、呼吸困難はどんな動物でも死に至る可能性があります。
ちょっとした怪我だと思わずに必ず早期に病院を受診いただければと思います。
何かに気なることがあればオハナペットクリニックにご相談ください。