猫の回盲部腫瘤
猫の食欲不振は様々な原因で発症する可能性があり、高齢猫では代表的な疾患として腎不全、甲状腺機能亢進症、肥大型心筋症、口腔内炎症など多岐にわたる。
今回は急性の食欲低下から穿孔を伴う回盲部腫瘤を認めた症例をご紹介します。
症例
猫 雑種 11歳8か月齢 去勢雄
昨日まで食欲元気はあったものの急性の食欲廃絶となり、当院を受診しました。
血液検査では軽度の貧血、血小板減少、白血球上昇と低アルブミン血症を認めました。
腹部超音波検査では右結腸リンパ節および空腸リンパ節の腫大と回盲結行部に5層構造の破壊された腫瘤性病変を認めました。腹膜の高エコー化を伴い、強い癒着や炎症像を伴っているものの腹水は認められませんでした。
追加検査としてCT撮影+造影検査を実施し、回盲部腫瘤において一部穿孔を認めましたが、明らかな転移像を認めなかったため緊急開腹を実施しました。
開腹下にて針生検を行い、リンパ腫などの独立円形細胞の腫瘍を除外した上で、外科的切除を行いました。
腫瘤と腸間膜は癒着が強く、自壊も認められました。
腫瘤は周囲の腫大したリンパ節ともに一括で切除し、切除後回腸に縦切開を加え、結腸と断面積を一致させたのちに断端吻合を行い、腹腔内を洗浄した上で閉腹しました。
腹腔内にて軽度の腹水貯留が認められたため細菌培養・感受性試験に供したところ腸球菌の腹腔内発生が確認されました。幸い有効な抗生剤があったため大きな問題はなく、数日間の食事制限、入院管理ののちに退院しました。
病理組織学的検査の結果では『神経内分泌癌』の診断がなされました。 現在は食欲改善、徐々に体重も増加し、低アルブミン血症や貧血などの問題も解消され、元気に過ごしてくれています。
猫の回盲部腫瘤は特徴的な症状に乏しく、発見が遅れてしまうケースも珍しくありません。
定期的な健康診断のほか、嘔吐や下痢症状など日頃起こりうる些細な変化から発見につながる可能性もあるため、体調の変化がある場合はまず当院にご相談ください。
獣医師 市川


この段階では明らかな腹水の発生は認められませんでした。

