三尖弁異形成

三尖弁形成不全

今回は『三尖弁形成不全』という比較的珍しい病気についてです。

三尖弁とは心臓のなかにある弁の名前で、この弁があるおかげで心臓は逆流する事がなくスムーズに血液を送る事ができます。

三尖弁形成不全は産まれてきた時にこの三尖弁がうまく成長できず、形が異常になってしまう病気です。その結果、心臓内で血液の逆流がおきてしまい、重度になると腹水が溜まったり、呼吸困難になってしまいます。

ラブラドールやゴールデンで好発する病気ですが、ネコでもみられます。

この病気を持っている子は心臓に他にも先天性の病気(奇形)を持っている事が多いので他にも病気が併発していないかしっかりと検査をする必要があります。

治療は様々な種類の薬を使い、心臓の負担をとる内科療法になります。

その子の病態によって使う薬が大きく変わってくるので、やはりしっかりとした診断が必要な病気です。

犬では外科手術の報告数例がありますが、ネコでは外科手術の報告は極わずかになります。

麻酔や手術のリスクを考えると主な治療は内科療法になるかと思います。

今回の症例は600gの子猫でした。呼吸困難で来院しました。

前の病院でも心臓が悪いとはいわれていた様なのですが、具体的な診断までは至っていませんでした。

レントゲンでは大きくなった心臓とやや白くなった肺、太くなった血管(後大静脈)がみられます。

エコー検査で三尖弁の形態に異常が見られ、その部位からの逆流とそれによる心拡大がみられ、確定診断に至りました。

内科治療を開始してからはレントゲンでも心臓が小さくなり、呼吸も楽になってきました。

体も大きく成長してくれて、先日無事に避妊手術も終わりました。

このまま元気に過ごしていけるよう今後もしっかりケアしていきます。