乳び胸
こんにちは。
今日は乳び胸に関してお話します。
乳び胸とは、胸腔内に「乳び」とよばれる乳白色の液体が溜まる状態のことです。
通常、腹腔内のリンパ液を集めたリンパ管は静脈へ合流していきます。
しかし何らかの原因により、リンパ管で排出障害が起こると、乳白色のリンパ液(乳び)が漏れ出し、胸水として胸腔内に貯留します。
これを乳び胸といいます。乳びは腸から吸収された脂肪をたくさん含んでいるので乳白色を呈しています。
原因は、外傷、心臓病、胸腔内の腫瘍、フィラリア症、先天的な奇形、血栓症などが知られていますが、そのほとんどが特発性(原因不明)といわれています。
症状は胸水貯留と同様で、呼吸数の増加、開口呼吸、食欲低下、元気消失、咳などです。少量の貯留では無症状のこともあります。
乳び胸が慢性経過をたどると、胸膜に炎症が起こり肥厚してきて線維素性胸膜炎を起こします。炎症が起こると徐々に肺の機能が低下し、少量の胸水でも呼吸困難を呈するようになってしまいます。
呼吸が苦しく胸水が溜まっている場合は、まず胸水抜去を行います。それだけで症状はかなり改善します。
そして乳び胸の原因が心臓病や腫瘍などに続発して起こっている場合は、まずもともとの疾患の治療を優先して行います。
特発性の場合は、利尿剤などをの薬剤を使った内科療法を行い、反応が悪い場合は外科療法を検討していきます。
しかし一般的には乳び胸に対する確立された治療法はなく、ある症例にはよく効いた治療法も別の症例には効かないという可能性もあるので、その子に合わせた治療法を一緒に探していきます。
ここで乳び胸の猫の一例をご報告します。
本症例は、もともと心筋症で心原性胸水の貯留も認められた子でした。
定期的に胸水抜去を行いながら、心臓に対するお薬と利尿剤でコントロールをしていました。
症状も落ち着き、徐々に胸水も減ってきて、良好にコントロールできていましたが、ある日再度胸水が溜まっていたため、胸水抜去を行いました。
すると今まで薄い黄色をした透明な胸水だったのですが、今回抜いた胸水は乳白色を呈し、明らかに今までの胸水とは異なっていました。
胸水検査をすると乳びでした。心原性胸水と乳び胸の併発です。
本来なら利尿剤を増やしますが、本症例は腎臓や甲状腺も悪く、それらの追加治療は躊躇されました。
幸い、本人は特に目立った症状はなかったため、オーナー様とご相談の上、今後も同治療を継続し、定期的に胸水抜去を行って様子をみていくことになりました。
今のところ、2週間おきの胸水抜去で良好にコントロールできています。
乳び胸でなくとも胸水の貯留は直接肺を圧迫するので、本人はとても苦しいです。
苦しくなっていないかご自宅での確認する方法としては、1分間の呼吸数を測ることです。
呼吸数は必ず安静時に測ってください。興奮時は正常でも呼吸数が増えます。
胸やおなかの動きをみて1分間の呼吸数を数えます。
犬での正常呼吸数は10~30回、猫では20~40回です。
それ以上の呼吸数の場合は、苦しくなっている可能性があるので、早めの受診をおすすめします。
オハナペットクリニック 二階