犬の皮膚肥満細胞腫

今日は犬の「肥満細胞腫」についてお話します。

 

12歳のパグさん。

おなかのしこりが急に大きくなってきたということで来院されました。

 

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おなかを見てみると3.5~4cmくらいのしこりが認められました。

そのしこりに細い針を刺して、その細胞を顕微鏡でみてみると、紫色の顆粒をもつ「肥満細胞」と呼ばれる細胞が認められました。

この時点で、「肥満細胞腫」であることが疑われました。

 

肥満細胞腫は犬の皮膚腫瘍では最も発生が多いとされる腫瘍で、皮膚腫瘍全体の7~21%を占めています。

主に皮膚や皮下組織に発生することが多く、内臓に発生することはまれです。

 

肥満細胞の顆粒には、ヒスタミンやヘパリンという物質を含んでおり、それらが放出されると腫瘍の周りが赤く腫れたり、胃潰瘍などを招くこともあります。

このパグさんでは幸いそういった症状は認められませんでした。

 

肥満細胞腫の外観は、小さいものから広範囲に広がっているもの、かたいものからやわらかいものまでさまざまです。一般的には赤く脱毛していることが多いです。

また、少しずつ大きくなる緩やかな経過をたどることもあれば、急速に大きくなり転移する悪性度の強い挙動を示すこともあります。

つまり、見た目だけでは一概に判断できないということになります。

 

肥満細胞腫に対する治療の第一選択は外科手術です。

このパグさんも手術でしこりをとることになりました。

 

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手術は無事に成功しました。

病理検査でも「肥満細胞腫」と診断されました。

 

手術で腫瘍細胞を取り切れなかったり、それ以前に全身麻酔がかけられないという状態の場合は、放射線療法や化学療法を行うこともあります。最近では分子標的薬という内科療法も有効な場合があり、治療の幅が広がっています。

 

このパグさんは手術後、再発もなく経過は順調です。

ワクチンやフィラリア予防の診察で元気な姿をみせてくれています。

 

 

肥満細胞腫は、完全な切除ができれば比較的良い経過をとることが多い病気です。

今までなかった「しこり」を見つけたら、様子を見過ぎず、早めに病院を受診されることをおすすめします。いつでもお気軽にご相談ください。

 

※犬と猫では、同じ肥満細胞腫でも発生部位・治療法・予後などが異なります。猫の肥満細胞腫についてはまた次回お話させていただきますね。

 

 

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