褐色細胞腫
こんにちは
今年の冬は寒暖差が激しいですね
みなさん体調崩さず過ごしていますか。
お体気をつけてお過ごしくださいね
今回は「褐色細胞腫」という病気についてお話します。
すこし珍しい病気ですが、副腎という臓器にできる悪性の腫瘍です。
副腎は、とても小さい臓器で、腎臓と大きな血管の間に左右 1つずつあります。
(腎の横の小さい臓器だから副腎です)
アドレナリンなどのホルモンを血液に乗せて全身に送っています。
「褐色細胞腫」は副腎の細胞の中でもホルモン分泌が盛んな細胞が腫瘍化してしまう悪性腫瘍です。
悪性の腫瘍はどれも困ったものですが、
この腫瘍には特に困った点がいくつかあります。
まず見つけにくい。
副腎はもともと小さい臓器なので、見つけにくいです。
ひと昔前は超音波機器が今よりも性能が良くなかったこと、CTなどの精密検査機器も少なかったことから早期発見が難しかったです
近年は特に超音波機器の性能が上がり、健康診断などで偶発的に見つかることが増えてきています。
症状が様々
悪性腫瘍は初期に症状が出ないものも実は多いです。
ただ「褐色細胞腫」はホルモンの異常分泌などから、ホルモン異常の症状や、頻脈・失神などの不整脈症状。
さらには副腎破裂による大量出血。血栓塞栓症。血流に乗っての多臓器転移などが起こることがあります
治療が難しい
「褐色細胞腫」の治療は、外科手術による摘出です。抗がん剤や放射線治療は効果が薄いといわれています。
しかし、ここまで書いたように、臓器が小さいこと、大血管に接していること、ホルモンの異常分泌などによる不整脈など手術・麻酔のリスクはかなり高い病気として知られています。
今回治療を行った子も、別の病気を疑った検査の際に偶発的に副腎の腫大が見つかりました。
普段からの症状は出てなかったですが、CT検査結果などから「褐色細胞腫」が疑われました。
飼い主様は手術を行うか、悩みながら最終的に手術を選択されました。
私たちも手術に、特殊な薬剤や、器具などを用意し、できる限りの準備で臨みました。
幸い、麻酔も比較的安定し、出血もほぼなく手術を終えることができました。
——以下 手術の写真—————————
左の手が押さえているのが血管です。血管の12時から1時方向に副腎が見えます
先ほどと上下逆向きの写真です。ゆっくりと副腎と周りの組織を剥がしていきます
血管の血流を少し遮断して、副腎を摘出するところです。
出血や、血圧の大きな変化のリスクがあり手術室の先生たち全員が息を飲みます
摘出後の様子です。綺麗に取れました。
今回の症例で感じたことは
いつも書いていますが、健康診断などの検査の大切さと、
とても難しいですが、リスクをとっても治療するリターンについてです。
治療をする上で、金額や時間などかかってくるものは多いですが、
命そのものがかかった時に選択がとても難しくなります。獣医師も尻込みしてしまうこともあります。
これについてはケースバイケースで、結果次第で大きく変わってもしまいます。
ただ、今回治療を行った子は、治療をしなければおそらく生きていられなかった寿命を得ることができました。
とても苦しい選択で難しい手術でしたが、この飼い主様とワンちゃんを見ると本当に良かったと思います。
オハナペットクリニック
多田