胆のう摘出術(胆石症、胆泥症、胆嚢粘液嚢腫)
こんにちは
今回は ”胆嚢(たんのう)疾患” についてお話しします。
今日のお話は5歳以上の子、健康診断を考えてる子、とくにわんちゃんを飼っている方に読んでいただきたいです。
胆囊とは、肝臓でつくられる胆汁という消化液を貯めておく袋です。
胆汁はごはんを食べたときに胆嚢から総胆管というくだを通って小腸に流れ脂肪の消化を助けてくれます。
この胆嚢という袋ですが、年をとると調子が悪くなってきて病気になってくることが多いです。
人だと「胆石症」が有名ですね。(うちの父も胆石症です。。)
胆嚢の中に石ができてしまう病気です。
犬では、石というより泥状にドロドロになってしまう「胆泥症」が多いです。
胆石や胆泥は、胆嚢の中にある状態では症状がでることは少ないですが
胆嚢から流れて総胆管などで詰まるととても痛く、元気食欲の低下、発熱、嘔吐、下痢、肝障害、黄疸などがみられます。
さらには詰まった石が流れきらず、途中で完全に閉塞したり(”胆管閉塞”)、胆嚢が破れて胆汁がお腹の中に漏れる(”胆嚢破裂”)と命の危険もあり、外科手術で「胆嚢摘出術」が必要になる事があります。
以下は、実際に当院で行った手術の写真です。
胆嚢が異常に腫れあがって、中の胆汁の色が透けています。まわりが黄色く染まっています(黄疸)。
黒緑色のものが胆汁(胆泥)で、やはり胆嚢が破裂していてお腹の中に漏れていました。胆汁は酸なのでまわりの臓器に触れてしまうと腹膜炎をおこします。
この状態になるとかなりの痛みがあり、ぐったりしていて、ごはんはとても食べられるような状態ではありません。
↓が破れた胆嚢です。
とくに胆石や胆泥が貯まることやホルモン疾患の影響で胆嚢が膨らんで破れやすくなった状態を「胆嚢粘液嚢腫」とも呼びます。
↓の子も胆嚢粘液嚢腫で、おそらく何度も部分的に破れて具合が悪くなり、なんとか塞がっては破れてを繰り返した結果、胆嚢周囲に炎症の痕が広がって癒着もみられました。
ただれてしまった肝臓も障害が大きかったため肝臓も胆嚢と一緒に切除を実施しました。(肝部分切除術)
とても大きな手術です。
↓の写真は破裂はしてなかったですが、複数回 胆石・胆泥が詰まって強い症状が出て入院を繰り返した後に手術を実施した子です。摘出した胆嚢から胆石が認められました。
”胆嚢疾患”は程度の違いはありますが、珍しい病気ではなく、むしろ中齢(5〜7歳)以上の犬でよくみられる病気です。
おやつをよく食べる子
太り気味の子
お腹がまるっとしてる子
毛が薄くなってきた子
など、脂肪の取りすぎ、肥満、ホルモン疾患などが”胆嚢疾患”のリスクを上昇させます。
ここまで読んだ方で、ギクッと少し心配になった方は健康診断をオススメします。
中齢以上の子によくみられる”胆嚢疾患”ですが、健康診断(レントゲン、超音波、血液検査)を受けてくれる子のほとんどの場合は無症状か軽症で見つかります。
知らず知らずのうちに破裂寸前になってたという怖い状況を避けていくために、ぜひ一度ご相談ください。
※症状や発生場所の違いによって”胆嚢炎”、”胆管炎”、”胆管肝炎”など細かい名前の違いがありますが「胆嚢疾患」としてひとまとめにしてます。
オハナペットクリニック 獣医師 多田