門脈体循環シャント(PSS)

 

こんにちは。

今回は、門脈体循環シャント(PSS)という病気についてお話します。

 

門脈とは、胃、小腸、大腸、膵臓、脾臓などの臓器から、肝臓に入っていく血管(静脈)のことをいいます。

 

通常、消化管から吸収された栄養素やアンモニアなどの毒素は、前腸間膜静脈という血管から門脈を経由して肝臓に入り、そこで代謝された後に全身へと送られます。

 

ところが、本来門脈を通って肝臓に入るはずの血液が、肝臓を通らずに全身の静脈系に流れてしまうような、異常血管(シャント)が開通してしまうことで毒素などが全身を巡り、神経症状や成長不良といった症状を引き起こすことがあります。

 

PSSには、

①血管の奇形による『先天性』

②肝硬変などによる門脈高血圧に続発する『後天性』

の2種類があります。

 

症状としては、

・旋回行動、発作などの神経症状

・体重減少、削痩などの成長不良

・食欲不振、嘔吐

などが挙げられます。

 

後天性の場合、診断に至る時の年齢が高く、先天性よりも神経症状が出てくる可能性は少ないと言われています。



PSSは、先天性の場合、治療の第一選択は外科手術になります。本来存在しないはずの異常血管を結紮する内容になります。



今回の症例は、左胃静脈と横隔静脈の間に異常血管を持った約1歳のヨーキーさんです。

 

主訴は、頻尿と尿に石が混ざっているというものでした。

膀胱を超音波検査したところ、いくつか結節がみられ、尿に出てきた石を分析したところ、尿酸アンモニウムという成分でできた結石であることがわかりました。

 

尿酸アンモニウムは、酸性の尿で作られやすく、またPSSや重篤な肝不全の場合に見られることがあります。

 

血液検査にてアンモニアや総胆汁酸などPSSのヒントとなる項目を調べたところ、共に異常値だったため、確定診断のためにCT検査を行うことになりました。

CT検査の結果、左胃静脈ー横隔静脈シャントという診断に至り、外科手術を行うことになりました。

 

写真では、手術前の異常血管が存在する様子を見ることができます。

 

今回の手術では、異常血管を特殊なリングを使って結紮しました。




術後は定期的な超音波検査や血液検査を行い、現在特に問題なく元気に生活しています。

 

PSSは気づかないうちに進行し、若齢にもかかわらず肝硬変になってしまうこともあります。

気になる症状などありましたら、いつでもご相談ください。



オハナペットクリニック  豊田