精巣捻転
こんにちは
今回は「精巣捻転」で来院した子のお話です。
中齢のわんちゃんで、今まで特に大きな病気はなし。
数日前から元気食欲の低下がみられ当院を受診しました。
嘔吐が1回とどこか痛そうな気もするとのことでした。
身体検査では元気がなく、お腹が痛そう。少し発熱がある以外にはハッキリと原因は分からずレントゲン・超音波・血液の検査を行うことにしました。
その結果、血液検査で白血球数やCRPなどの炎症の項目の高値と、超音波検査での腹膜炎所見と腹腔内腫瘤(しこり)がみられ、入院となりました。
また、この子は、生後半年ほどで陰嚢内に降りてくるはずの精巣が片方降りてこず、
腹腔内にとどまってしまう腹腔内陰睾(停留精巣)でした。
腹腔内陰睾それ自体は 緊急性はありませんが、腹腔内は本来の位置である陰嚢以上に高温になるので
腫瘍化しやすいことで知られています。
そして腫瘍化した際には、ほとんどの場合 末期になるまで症状に気づかないことが多いです。
未去勢で腹腔内陰睾だったこともあり、腹腔内腫瘤は精巣の可能性が高いと判断し、手術を行うことになりました。
以下、手術の写真があります。
開腹すると、巨大な腫瘤が見られました。
巨大化した腫瘍が暗赤色に変色している。
ねじれた先からうっ血し腫れています。
精巣摘出後。癒着した箇所で炎症を起こしてる腹腔内脂肪
腫瘤は巨大化した精巣でしたが、精巣につながっている血管・精管がねじれており、
血流が遮断され、炎症・壊死を起こし、周囲の脂肪に癒着していました。
そのせいで腹膜炎を引き起こし、痛みや元気食欲の低下を起こしていたのです。
無事に精巣腫瘍を摘出し、この子は元気になり退院していきました。
検査に出した結果はやはり精巣腫瘍が疑わしいが、細胞が壊死変性しハッキリとは分からないとの結果でした。
現時点では転移などの危険性は高くはないとの結果が返ってきました。
ただし転移の可能性が0というわけではないので、
今後、転移がおきないか定期チェックをしていく予定です。
精巣腫瘍や、卵巣腫瘍、乳腺腫瘍は避妊去勢手術で予防ができる腫瘍です。
未去勢・未避妊の子は、
ぜひ予防のためにも避妊去勢手術をご検討ください。
オハナペットクリニック
多田