全耳道切除術(慢性外耳炎)

今回は、犬の耳道の皮膚の過形成による狭窄に対して全耳道切除術を行った症例についてお話します。

 

外耳炎は、多くの犬がかかりやすい病気の一つです。

外耳炎が慢性的に悪化してしまう状態を慢性外耳炎といいます。

外耳道とは、耳介から鼓膜までの領域を指しており、犬は人と違って垂直耳道と水平耳道からなる通気しにくい構造をしています。

犬が外耳炎を起こしやすい素因として、垂れ耳である、耳道が狭い、耳毛が多いことなどが挙げられます。

 

症状としては、

・耳をひっかく

・頭を振る

・床などに耳をこすりつける

・耳を触ることを嫌がる、怒る

・耳が赤い

・耳が臭い

・茶色~黒褐色の耳垢や、膿が出ている

等があります。

 

好発犬種は、垂れ耳、長毛、アレルギー疾患を発症しやすい犬種であり、アメリカン・コッカ―・スパニエル、キャバリア、フレンチブルドッグ、パグ等が含まれます。

 

外耳炎を起こす直接的原因としては、

・異物による物理的な刺激

・アレルギー

・寄生虫

・細菌、真菌

などが挙げられます。

 

今回の症例は、耳の赤み、かゆみがあるとの事で何度か来院されていた12歳のトイ・プードルさんです。初期の頃は抗菌剤、抗真菌剤、ステロイド剤を含む点耳薬で治療を行い、症状は落ち着いている様子でした。

しかし、薬を継続していてもかゆみに波が生じるようになり、耳介・耳道の腫脹、耳垢・膿の増加や有茎状のできものが現れ始めました。

耳道狭窄も重度であったため、専門医の方にも意見を頂戴し、両側全耳道切除及び鼓室胞切開を実施する事になりました。

切除した耳道については病理検査の結果、左右ともに重度、広範囲、慢性、過形成性の耳道皮膚炎と診断されました。また、左耳に形成されていたできものは小型の耳垢腺腫(良性)と診断されました。

術後、一時的に眼瞼反射の消失が見られましたが、点眼治療を行い、1ヶ月弱で反射の回復が見られています。

同時に、もともと症状としてあった眼周りの赤み、四肢の肉球周囲の赤みに対してアトピー性皮膚炎の治療を始めることになりました。

 

現在は、アトピー性皮膚炎に対する内服薬と、耳介の赤みに対して外用薬を用いてコントロールできておりQOLを維持できております。

 

外耳炎は、再発を繰り返してしまい、難治性、慢性の外耳炎になってしまうことがあります。

耳を清潔に保つ、日頃からよく耳を観察することが大切です。

ただし、耳掃除は誤った方法で行うとそれにより外耳炎になってしまったり、悪化する可能性がありますので、頻度や方法はその子の耳の状態に合わせる必要があります。

 

耳は赤くないか、耳垢の色、耳を気にする様子がないか、頻度が増えていないか。

何か気になることがあれば、いつでもご相談ください。



オハナペットクリニック 豊田